猫を撫でる。
そして美梨は愛想がいい。
いろんな人から誘われた。
美梨は人妻なのに、結婚指輪をつけていなかった。
ずいぶん前にエステサロンで無くしてしまい、そのままだった。
もうすぐ午後6時になるというのに、
美梨はコピー室にあるシュレッダーで
ひたすら書類を始末していた。
同じ庶務課のお局 吉田智子に大量の書類をシュレッダーするように言いつけられたのだ。
美梨は彼女にすっかり嫌われてしまっていた。
狭いコピー室に、シュレッダーの作動するブーンという音と紙が裁断されるザクザクという音が交互に響いていた。
一度にたくさん紙を入れるとつまって
しまう。
気を付けてるのに時々詰まってしまった。
「はあ…」
美梨はため息をつく。
案外シュレッダーは大変なのだ。
「あれ?吉川さん、何やってんの?」
背後から声がした。
美梨が振り向くと、開いたドアの向こうに桂木涼太がいた。
現場から戻ってきたところらしく、
作業服にスラックス姿だった。