俺とあたしがウソを吐いた日。
「……本当にありがとね」
杏実がしっかりと俺の目を見つめながら、言ってきた。
できるだけ自然に目線を外す俺。
その行動をするたび、杏実の瞳が曇っているのに気づかず。
「気にすんな」
「あの日から、ずっと話してなかったでしょ?
助けてくれるなんて……。
『大事なクラスメート』って言ってくれるなんて思ってなかった」
『クラスメート』と杏実が言った瞬間、俺の肩がビクリと揺れた。
「嬉しかったぁ。
また、仲よくできるよね?」
嬉しかった?
『クラスメート』が?
俺は嬉しくない──!
今、はっきりとわかった。
杏実は俺のことを恋愛対象に見てない。
俺の好きとは違うと。