俺とあたしがウソを吐いた日。
「灯汰?」
「……美味かった。ありがとう。
帰ろう、か。それとも、何か用事ある?」
一瞬、傷ついた表情をした杏実だったけど、すぐに笑顔に戻った。
「──ううん。帰る」
「そっか」
送るよ、と呟き席を立った。
前みたいになんてできないに決まっている。
だから、「仲よくできるか」という問いに対する答えを誤魔化した。
俺の弱さ。
わかっていてもどうしようもなかった。
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