理央のおにいちゃん
 理央はパパとママを事故で亡くして、奈良から千葉へ引っ越してきました。

 おじさんとおばさんのいる町です。
 
 町のハズレに古びた神社があって、理央が学校帰りに通ると、笑い声が聞こえました。

「理央はえらいね。パパとママがいないのに泣かないでいて」

「おにいちゃん、だれ」

「ニギハヤヒ。でもおにいちゃんでいいよ。オレ、理央のことなら何でも知ってるんだぜ」

「どうして」

「ここの神様だから。そして理央のこと、ずっと見てたから知ってるよ、オレは理央が好きだから、理央と会えたんだ」

 ニギハヤヒのおにいちゃんは、にこにこと笑いながら言いました。

 それから、毎日のように理央とおにいちゃんは遊びました。

 あるときおにいちゃんは、真面目な顔で理央の手をにぎって、言いました。 

「なあ理央。大きくなったら、おにいちゃんと結婚しないか?」

「いいよ。おにいちゃんのこと、大好きだもん」

 理央が頬をほんのり桜色に染めると、おにいちゃんは真っ赤な顔になっていました。

「約束したからな。きっとだぞ」

 おにいちゃんと理央は指切りをして約束げんまんしました。



 理央はそのあと、東京へ引っ越していってしまいました。
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