おっかけ!


私は、黙ったまま駅前につきました。

『渚ぁ!』

前から相楽がやってきました。

『楓真…なんでここにいんのよ!』

『渚が一緒に帰ってくれないから…』

『はぁ…あんたは、いつ…』

2人は、言い合いになりました。私は、とめにはいろうとしましたが、榊原にとめられました。
今は2人にして、僕らは帰ろう。そういわれました。私は、渚の肩を2回たたいてホームにむかいました。

電車がくるのは、15分後です。私は、ホームに行かず、駅のなかにあるカフェにはいりました。中には、店員1人と客2人しかいませんでした。
私は、一番おくの景色がよくみえる席につきました。

外は、たくさんのショッピングセンターがならんでいます。一番高いビルの壁に大きな千晶くんのポスターがはられていました。今、大人気の服屋さんのポスターでした。

やっぱり、千晶くんがカッコいいなぁ。本当にこの学校にいるのだろうか。
遠い存在の千晶くんです。

目の前の千晶くんが榊原にかわりました。

『榊原くん…なんでこ…』

『やっぱり、この男がすきなんだね…』

かわいい顔の榊原の顔が怖い顔にかわりました。

『いやっ…でも…千晶くんは、芸能人で…その…手に届く存在じゃないから…だから…だからね……恋愛としてじゃなくて、俳優として好きなだけで…そのぉ…。』


『ほら、やっぱり好きなんじゃん。僕をみてよ。』


私は、席をたって、店をでました。頼んだコーヒーを飲まずに。


お会計をしおえて、あのショッピングセンターにはいりました。
たまに母とご飯を食べにくるだけで、あまりこのショッピングセンターにはいったことは、ありませんでした。

どこの階になにがあるのか、それすらわかりませんでした。

逃げてきただけで、行きたい場所もなく、ただぶらぶら歩いているだけでした。後ろをみても、私をおいかけてくる榊原は、みえませんでした。

私は、目の前の服屋のマネキンに目がいきました。私があまり好きでない、黄緑色のワンピースがありました。
スカートの下には、フリルがついていて、上のほうにかわいい白いリボンがついていました。

試着なんてしません。気に入ってしまったのですから。

お会計をすました私は、そのまま駅にむかいました。あたりは、真っ暗で家々のあかりがともっていました。

歩道の電灯がついていて、所々、地面があかるくなっていました。

トコトコ

私の後ろから足音がします。

まさか、また榊原が…?

まさかと思い、私は走ってみました。
すると、後ろからきこえてくる足音がはやくなってきます。

後ろを振り返ろうとしても、こわくて振り返れませんでした。

自分がどこにいて、どこに向かっているのかわかりません。


私の前には、大きな黒い板が…。

そう、いきどまりです。
私は、やっと後ろを振り返ることができました。というより、振り返ることしかできませんでした。

振り返ると、2人の男の人がいました。

『やっと、おいついた…。』

『なん…で…す…か…?』

声が震えていました。
2人の男は、紺色のスーツをきていました。

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