【完】保健室で君と××~プレイボーイとイケナイ恋愛授業~
◇愛しき転校生 ─希美side
「市原和馬です。小さい頃にもここに住
んでて、また戻ってきました」
まさかこれが、嵐の始まりだなんて。
誰も、思っていなかった───。
私は、教卓の前でそうやって微笑んだ、
その人を信じられない思いで見つめた。
昔の面影を少し残したまま、うんと大人
っぽくなった姿……。
でもあの頃と、変わらない、微笑み。
──『希美ちゃん』
あの頃の彼の声が、私を呼ぶ声が、鮮明
に脳内で再生されていく。
「和馬……くん……」
ポロリと口からこぼれた声は、自分でも
驚くくらいに震えていた。
「──長……委員長」
「……っはい!」
思わず呆然としていたら、先生に呼ばれ
ているのに気付かなくて、思わず声が裏
返った。