【完】保健室で君と××~プレイボーイとイケナイ恋愛授業~
そして、まるで何かに囚われたように身
動きの取れない俺に、委員長は椅子から
立ち上がり、近付いてくると。
「香坂」
と、俺を真っ直ぐ見つめて、そう呼んで
きた。
ああもう、どうしよう。
こんな風に名前を呼ばれただけで、普通
に接してくれてるだけで──涙が出そう
なくらい、嬉しいだなんて。
「……香坂?」
「……え、ああ。な、なに?」
何も言わない俺を不思議に思ったのか、
怪訝そうにした委員長に、慌てて返事を
する。
落ち着け、俺。
「……別に、たいした事じゃ無いんだけ
ど……」
「うん」
一瞬目を伏せてから、意を決したように
俺を見上げる、委員長。
揺らぐことのないその眼差しに、ときめ
きとはまた違った動悸が、俺を襲った。