K・K・K
次の日、またあの公園の前までくると、例の集団がいた。

桜ケ丘公園は、住宅街でもなく飲食街でもなく、すこし町はずれの、見晴らしの良い丘にあった。
だから、ここでいくら大きな音をたてようと、苦情を出す人なんてそうそういない。

そのすぐ傍にジャンポールバーが、ひっそりと商いしていた。


(今日は高校生だけなんだ。)


香は、最近毎日その人たちに会っているような気分だ。


次の日も、その人たちは集まって、あのキレイな音色を響かせていた。

つぎつぎに繰り出される音が心地よくて、ついつい香は足を止めた。



その集団もまた、香の存在に気づいていた。

特に長身の男は、一度ならず二度、香と接点があったし、
ほぼ毎日入っていくそのバーにも興味を持っていた。


時折視線が交差することもあったが、お互いに権勢して、近寄ることはなかった。



相変わらずジャンポールバーでの香の人気はすごかった。


風変りなお客から、カップル、仕事帰りのサラリーマンなど、その店の雰囲気と香の音色を聴きにお客は集まった。


外では公園に、あの丸くて銀色の楽器を持った人たちが集まった。



いつものように香が最後の締めの曲を弾き終わると、マスターが手招きしているのが見えた。

香は楽譜をしまい、カウンターの一番右端に座った。


「香ちゃん、あの人、この間言ってた人だよ。香ちゃんのピアノまた聴きに来るっていってた人。」


そう言ってマスターは、ピアノに一番近いテーブル席の男性に視線を移した。


男性は、きっちりした眉にキリリとした目が印象的な、一般的にダンディズムと言われるような男性だった。
その男性は、香がみている事に気がつくと、口を横に伸ばして、かるく会釈した。

香もその笑みに応えるように軽く頭を下げた。


男性は立ち上がり、几帳面に椅子をしまうと、持っていたウィスキーのグラスを片手に香の所に歩いてきた。


「どうも、こんばんわ。」


とてもゆっくりで重低音のような低い声だった。













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