K・K・K
(・・・・・・・・・・・。)(私)
「・・・・・・・・・・・。」(母)
「・・・・・・・・・・・。」(父)


その言葉をきっかけに、3人の沈黙は続いた。



「そうだね・・・。もう一年だ。」


「早いわね。」


母も父も、窓外に広がる水平線よりももっと先を見ていた。

香もそれに続いた。


「ちょっと歩かないか。」
父は母と香を見てそう言った。



通りを超えて砂浜に入ると、湿った砂が、サンダルから剥き出しになっている肌にまとわりついた。



「かずは、どこにいるんだろうね。」
父が言った。


「きっと、見た事もない素敵な場所に辿りついたわ。」
母は言った。

(・・・・・・・・・。)


「そうだといいね。」
父は涙目でそう言った。

母は父の背中をそっとさすった。

二人の背中を眺めながら、香は、

(ねぇ、かず。いたら返事をしてほしい。二人が泣いているよ。かずが、’泣かせたくない’と言った父と母が、泣いているよ。)

どこまでも続く海を見て、そう言った。


春風が顔を吹き抜けた。


「ごめんね。」

と、そう言っているようだった。


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