K・K・K
母は手に持っていた、ガーベラの花束を海に投げ入れた。


花束は、海の流れに身をまかせて、あっという間に遠くまで泳いでいった。


(どうか、かずの所に届きますように。)
香は目を閉じて、祈った。




「香。お父さん、ごめんな!一緒にいてあげられなくて。香も辛いよな。あんなに仲良くしていたから、でも、香はしっかり生きなさい。お母さんを支えてあげてほしい。」
父は香の肩を両手でしっかり掴んで言った。


(痛いよ。)
香は父の顔が見れなかった。



(私のせいなんだよ。お父さん。ごめんなさい。私がかずを死なせてしまったんだから。)


香の目から涙がこぼれた。
「うぁ~。ぅ、ぅあ~。」

目の前の視界が、涙で歪んだ。

「香、ごめんな。」
父は香を抱きしめて肩を震わせた。



母は、気丈に海を眺めていた。



かずは、約一年前、香が中学を卒業して高校に入学するまでの、短い春休みの間に、亡くなった。



この湘南で・・・。


この広い海のどこかに眠っているのかもしれない。


捜索は広範囲で行われたが、見つかることはなかった。



その時、香は声を失った。








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