K・K・K
医者にも行ったが、極度のショックによるもの、と言われ、
結局これと言った治療法は見つからなかった。

しばらくの間は、催眠療法やカウンセリングにも通ったが、
完治には至らなかった。


香は、心の中では普通に会話をする事ができた。

傍から見たら、普通の女子高生だし、
声が出せないだけで、意志表示もちゃんとできた。

それだけに周りの判断を鈍らせた。

香の母も父も自分たちに必死で、
香が声を失っても、そのケアをしてくれる人はいなかった。


「お兄さんを亡くして落ち込んでいるんだわ。」
近所のおばさんたちは言った。

「しばらくの間はそっとしておこう。」
中学からの友達も気を使った。

そんな風に、皆に守られ、外界から離され、
一人の時間が増えれば増えるほど、
香はかずの死に向き合わなければならなかった。

実際に香はその当時、24時間かずの事を考えた。


香は普通に振舞っていたが、あの事件いらい
周りと自分との間に壁を作ってしまっていた。

無意識のうちに・・・。




二人でTVを見ていたソファー、

かずが勉強を教えてくれた机、

二人乗りした自転車、

かずから貰った香水、

二人で見た映画のチケット、

ディズニーランドの写真、

かずに借りたパーカー、

ついこの間まで来ていたメール、




でも・・・・・、



もう来ない。



3月18日の日付から、


止まってしまった。











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