K・K・K
下車駅に近づき、電車はガクンと止まった。

??????

その瞬間、持っていたコーヒー牛乳が、
前に座っていた同年代くらいの男子のYシャツにかかってしまった。


香はあわてて何度も頭を上下させたが、

男子は香を睨みつけ → (どうしてくれんだよ。)と、言わんばかりだ。


香は怖くなって、急いで電車から駆け下り、改札までダッシュした。

改札をPASMOで出て振り返ると、そこにはさっきの男子が立っていた。

(やばい。)

香の鼓動は早くなった。




「お前さ~、普通人にあんなもんかけちまったら、ごめんなさい。くらい言うだろ。」

男子は香をまだ睨みつけていた。

香は必死に声をだそうとした。

しかし、声は唸りにしかならない。

「う、うぅ~、うぉ。」


香の目から涙がこぼれてきた。


それを見た男子は、
「泣いてないで、あやまれっつってんの!」と言った。


しかし、香は俯いたまま、決してあやまることができない。



改札を行き交う人は、
何か問題でも起きたのかと、
香と男子を見比べたりしていたが、

近寄ってきて事情を聞く人も、足を止める人もいなかった。

とうとう諦めたのか、
男子は「今度こんなことしたら、ちゃんと謝れよ!」と言って、
香を覗き込み、少し体裁が悪そうな顔をして去って行った。



男子の後ろポケットからは「K」の文字の携帯ストラップがゆらゆら揺れていた。



香の脈はしだいに治まり、
トクントクンと通常のリズムを取り戻していった。

その時、香の目の前を、最終の通学バスが横切って行った。


(最悪。)



香はそのまま足を180°回転させて、

再び改札を抜け駅の構内へ入って行った。






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