K・K・K
歩いていると、後ろからまたシンの騒がしい声が聞こえた。
どうやら皆にあいさつをしているようだ。
「おはよう!。あっ、ともちゃん!今日も可愛いね!おはよう。おはよう。」

どんどん声が近くなっている。

ケンジも早歩きだったが、シンの方が上手だった。
あっと言う間に、シンはケンジの横まで来て、そのまま愛想を振りまくっていた。

「なぁケンジ、何か悩みがあったら言えよ!」
シンは相変わらず皆に手を振りながら言った。

「別に悩みなんかねぇよ。」
ケンジは素っ気なく答えた。

「それならいいんだけど・・・。」
シンの含みのある独特の言い方だ。

ケンジはシンが何を言わんとしているのか分かったが、あえて言うつもりはなかった。
『まず、自分でなんとかする。』
ケンジはそうやって生きてきたから。


「ケンちゃん、今日は練習するの?」
シンは珍しく話題を変えた。

「ん~、どうかな。みんな最近連日練習しているから、疲れてないかな。」
「そうかな。」

二人は足並みを揃えて校内に入っていった。


*****************

香は高校にバスが到着するまでの数分間、ついさっきあった出来事を考えていた。

(拍子ぬけ。)

香はそう思った。
自分の事をかなり怒っていると思っていたから、今まで合わす顔がなくて、ついつい目をそらしてしまっていた。公園でその男子を見かけても、当たり障りのないようにしてきた。それだけに、男子が謝ってきた事に驚いた。

(逆に気にさせた?)

香は珍しく男子の事で頭がいっぱいになった。

バスが高校に着いて、香はまっすぐ屋上に向かった。
澄んだ青が、頭上から遠いところまで延びていた。

心がちょっと軽くなった様な気がした。

今朝はi-Potのイヤホンで耳を塞がずに、自然の音を感じていたい、とそう思った。





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