K・K・K
今日はまたジャンポールバーでバイトが入っていた。
PM6:00からのバイトなので、早く着いて練習させて貰うか、
高校の音楽室に忍び込んで練習するか、香は迷っていた。

(今日もあの集団、集まってるのかな?)
香はフと思った。
香がかず以外の男子の事を想った事はない。
いつもかずを見て、かずの事だけを考えて生きてきた。

かずがいなくなっても、それは変わらなかった。

でも、今日は違った。

長身の男子の顔が忘れられなかった。
(良く見るとイケメンだったな。)

香の理想は今でもかずだから、その長身の男子がどれだけイケメンだとしても、香の中で勝負は着いていた。

(ああ言う男子が世間一般的にはモテはやされるんだろうな。)

(でも、人に謝るって、なかなかできない事だよね。)

(意外と誠実な男(ヒト)なのかな。)

香はやっぱり早くジャンポールバーに向って、練習しよう!と思った。


長い坂を登るのにはもう慣れた。
この坂を上ると公園が見えて、その脇にジャンポールバーがある。

香は今日だけは、この坂をドキドキしながら登った。

(やっぱり、あの男子がいたら気まずいな。)

香の足が重くなった。

でも、上り坂は後3分の1で終了だ。香は覚悟を決めて、前を見た。


登り切ると、もう公園の桜は散っていて、見頃は過ぎたようだった。

いつもなら公園の中央に人が集まっているが、今日はいなかった。鳩が2羽と雀が数羽電線に止まっているだけだった。

(拍子ぬけ。)


かおりはそのままバーに入って行った。


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