K・K・K
ケンジは授業中も今日は上の空だった。

何度か先生にさされたが、答える事ができず、その度に斜め後ろのシンがこっそり答えを教えてくれた。

休み時間の時、シンが気にしてケンジに話しかけてきたが、
心ここにあらずで、結局かみ合わない会話だけが二人の間に残った。

シンは結局ケンジから何も聞きだす事はできなかった。


(ケンジ、絶対何か隠してるな。昨日言ってた女子の事かな?)
シンは『きっとそうだ。』と言う確信を持っていたけれど、直接的にその話題に触れることはできなかった。


放課後二人は教室に残り、今練習している楽曲についてあれこれ議論した。

シンは最初は遊び半分でケンジについて練習していた。
しかし、練習を重ねて少しずつ少しずつ上手になってくると、いつの間にか好きになっていて、今ではケンジに、「ここはこうした方がいい。」とか意見する様になっていた。


「ダメだな、ここで話しててもらちあかない。やっぱ、公園に行って練習しよう!」
ケンジの一言で二人とも素早く立ち上がり、教室を出ていった。
今日は団員の皆にメールを送っていなかったが、二人だけで練習することにした。



移動中もケンジは上の空だった。

(あの娘、今日も来てるのかな?)
今朝会ったばかりの彼女に、
(また会いたい。)
そう思うようになっていた。


移動中腕時計を見ると、既にPM5:00を過ぎた所だった。

「なんか食ってから行くか。」
ケンジが言うとシンもそれに賛成して、二人は駅の近くのマックでしばらく空腹のおなかを満たした。


いよいよ暗くなってきて、二人は公園に向かった。

桜ケ丘公園は誰もいなく、近くのバーの店頭にある看板だけが細々とライトが付けられていた。


客も数人入っていったり、出ていったりしていた。


ケンジとシンは包みをあけて、スティールドラムを取り出した。
そしてさっき言っていた部分を入念に二人で練習し始めた。

(あの娘は今日もバーにいるのかな?)

ケンジは、バーの入り口に意識を集中させながら、シンと夜の公園にシャボン玉みたいな音を響かせた。♪♪♪


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