K・K・K
香はフと窓の外を見た。

歩道を歩く人。園内を幸せそうに歩くカップル。信号待ちをしている車。

すべてが小さく見えた。視線の先には巨大ビル。

(人なんて、ちっぽけな生き物だ。
 困っている人を見かけても、声もかけず、
 隣に住んでいても名前すらわからない。
 繋がっているようで、繋がりがない。
 笑顔の裏には、孤独がある。
 言葉は嘘を呼び、沈黙は誤解を招く。
 
 人なんて、いつ死ぬかわからない。

 かず、帰ってきて・・・・・・。)

******************

一周まわって観覧車は愛想のいいスタッフの所で止まった。
「ありがとうございました。」
入場スタッフはまたもや満面の笑みで香を迎えた。

「・・・・・・。」(どうも~)

香は観覧車から降りて、鉄骨の階段を慎重に降りはじめた。
香の背後から、あの感じのいいスタッフの声が聞こえた。

「感じわる~~ぃ。」

香はその言葉を、後頭部からシャギーの横髪を抜けて、
階段から地上に蹴飛ばした。


(いつも通り。)


香は、そのまま赤レンガ倉庫まで歩き、
以前雑誌でみた、アクセサリーショップに入った。

ちょっとゴツめだけど、気になるネックレスを発見した。
ちょうどキャンペーン中で、
プレートに好きな文字が入れられる!と、
熱心にスタッフの男性が話してくれた。
香は、半衝動的にそのネックレスを買う事にした。

「文字は何て入れますか?」
その男性スタッフはとても丁寧に話をしてくれた。

「・・・・・。」
長い沈黙・・・。文字を考えていたのもそうだけど、
どうやって、この男性に伝えればいいのか、香は考えていた。


男性は、香の呼吸に合わせ、笑顔でその時間を過ごしていた。

急に男性は、カウンターに戻ると、白いメモ帳と、ボールペンを持ってきてくれた。

「申し訳ございません。一生残る、大切な言葉ですよね。ゆっくり悩んで、決めて大丈夫ですからね!」

そう言って男性スタッフは、香にそれを渡して、ニコリと笑うと、
なにやら新しく入荷した商品を陳列し始めた。

香は、男性の気遣いに感謝しつつ、
ゆっくり、自分の言葉を探した。

『---believe in ---』
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