K・K・K
予習も終わって、そろそろバイト先に向かおうとした時、

同い年位の男女が、大きな荷物をそれぞれ持って集まってきた。

香は近づく事はなく、足を止め、またブランコに腰をかけて、
遠目にそれを眺めた。


一人の男子が大きな袋から、銀色で丸いものを出した。
それにつられて横にいた男子も、向かいの女子も、
それぞれ袋から銀色で丸いものを出した。

???


しばらくすると、ドラムのスティックに綿がついた様なもので、
その銀色で丸いものを叩きはじめた。

しゃぼん玉みたいな音色。

香はそう思った。


音合わせが終わったのか、
一瞬 シーーン として、

ファン♪♪ ファファ ファーン♪ 


次々にほとばしる音色が、桜を触発して、大きく花を揺らした。


香は背筋がピンとした。
そして、その様から目を離すことができなかった。


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


(あっ、、、音、はずれた。)

「ごめーん!!」

その中の一人の髪がツンツン立っている男子がどうやらはずしたらしい。
はにかんだ笑顔で何度もペコペコしている。

「おまえ、いつもそこで間違えてんじゃん(笑)。」
周りの人たちも、笑っている。

香はフと腕時計をみて焦った。
(ヤバッ)


香は立ち上がると、急いでそこから走り出した。



公園を出る時、また長身で大きな荷物を持った男子とすれ違った。

ドン。

香とその男子はほぼ同時に振り返った。

(・・・・・・・・。)

「あっ・・、おまっ」
       ~「ケンジー!!遅いよ!こっちこっち。」~

男子が言い切る前に、遠くの女子がその男子を呼んだ。

「わりぃー!」
ケンジと呼ばれている男子はそう言って香の方を見た。

香はペコリと頭を下げて、
逃げるようにその場から走り去った。

その男子は、今朝のあの男子だった。

< 6 / 33 >

この作品をシェア

pagetop