明日、あなたが目覚めたら
「千沙ちゃん?」
「……っあ、はいっ?」
名前を呼ばれてハッとする。
だめだ、笑顔。
笑顔でいなきゃ。
智のお母さんに心配をかけちゃいけない。
「私、何か飲み物を買ってくるわね。
千沙ちゃんは何がいい?」
「あ、いえ! 私が行きますっ」
「いいのよ、智のそばにいてあげて?」
……智のお母さんにそう言われてしまったら、私はそれに甘えさせてもらうしかない。
私がミルクティーを頼むと、智のお母さんは「もし智が目を覚ましたら、ナースコールを押してね」と言って病室を出て行った。
パタン、と静かに扉が閉まって、二人きりの空間。
シュー、シューと智がつける人工呼吸器の音が小さく響く。
「智……」
傷だらけのその腕にそっと触れる。
……あたたかい。
ちゃんとあたたかいよ、智。
「……っ」
涙が一粒、また一粒とこぼれ落ちていく。