明日、あなたが目覚めたら



……わかんない、智。


ねえ、あなたは何を考えているの?

もう私のこと、好きじゃないんじゃなかったの?

私のひとりよがりじゃなかったの?



あなたが目覚めたら、聞きたいことがたくさんある。

真実を知るのは少し怖いけれど、少しだけ勇気を出してみるよ。


ねえ、だから。



「早く起きてよ、智……っ」



ぎゅうっ、と智の腕に触れる力を強めたそのとき。


ぴくり、その体温が揺れた。



「……え?」



あわてて涙を拭い、顔をあげる。

だって、だって、今……‼



「と、とも……?」



動いた? 動いたよね⁉

智の整ったその顔を見つめて、何度も何度も呼びかける。



「智、わかる……? 私だよ、智?」



長いまつげが揺れる。


そして、そのままゆっくりゆっくりと持ち上がって……

漆黒の瞳があらわれた。


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