明日、あなたが目覚めたら
「……どうしたの、智? なんの冗談?」
しばらくの沈黙の後、智のお母さんがアハハとわざとらしい笑い声をこぼす。
だけど智は、至って真面目な顔つきで「何が……?」とこたえて。
……もう、だめ。
何がなんだかわかんないけど、今はもうここにいてられる気がしない。
頭が、割れそうに痛い。
「すみま、せん……また、来ます」
震える声でそう告げて、私は病室を飛び出した。
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病室から飛び出すなり看護師さんに衝突して、やんわりと注意された私。
もう走るわけにもいかず、かといって、相当ひどいであろうこの顔でこんな大きな病院を歩く勇気も気力もなかった。
「……っく、ぅう……」
そんな無様な私は、とりあえず近くにあった休憩スペースに居座り、まだ止まらない涙を抑えようとしていた。
止まれ、止まれ。
何度も何度も、それだけをずっと心のなかでつぶやき続けるけれど。
ぽろぽろ、ぽろぽろ。
落ちる雫を拭っても、またそれはとどめなく溢れてくる。