明日、あなたが目覚めたら
「……厳つい人じゃ、なくてよかったですね」
「泣き虫さんだったね」
「……うっさい」
ぽんぽん、ぽんぽん。
先輩の大きな手が、私の頭を優しくなでる。
いつもならすぐにでも振り払ってやるところだけど、今だけはその温もりにまた涙が出て。
反則ですよ、今は。
その優しさ。
だからつい、私はそれに寄りかかりたくなって。
「まなみ、せんぱっ……智が……っ」
「うん」
「智が、私のこと……っ、知らな、いって、だれ、って……」
「うん」
きっと真波先輩は私が言ってることなんて、あんまりわかってなくて。
この人のことだから、きっとてきとうに相づちをうっているんだと思う。
だけどそれでよかった。
それが、よかった。
「先輩、わた、し……!」
「うん。 大丈夫、大丈夫」
ふわり、先輩の胸に引き寄せられて。
まるで子どもをあやすみたいに、とんとん、と背中を優しく叩かれる。