明日、あなたが目覚めたら
.




オレンジに照らされる昇降口。

いつもよりずいぶんと早めに教室を出たせいか、ほとんど人がいない。



「ちぃちゃ〜ん」


「げっ……」



ローファーを履いてさあ帰るぞ、という私の耳に入った気の抜けた声。


その声の持ち主がだれなのかなんて確認していないのに、顔が反射的に引きつる。



「ちぃちゃん、今日ははじめましてだねー」


「はじめましてしたくなかったです、最悪です」



となりにやってきて、ひょこっと私を覗き込むのはやっぱり真波先輩。


今、最高に会いたくなかった人なんですけど。

土曜日のこともあるし、なんか、気まずいっていうか……。



「せっかく運命的に出会ったんだし、一緒に帰っちゃう?」


「…………」



ぱちん、とウインクをしてみせた真波先輩をみて思う。


やっぱり、この人相手に気まずくなることなんて一生ない気がする、と。


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