明日、あなたが目覚めたら
後輩にこんなふうにズカズカ言われてるのに、真波先輩はいやそうな顔をするどころか、クスクス楽しそうに笑う。
……真波先輩は正真正銘のMなのかもしれない。そうにちがいない。
そんなふうに考えていたら、キキッと小さな音をたてて真波先輩の自転車が止まった。
私も立ち止まって、いつの間にか落ちていた視線をゆっくりと上げる。
「とーうちゃく」
ふわっと笑う先輩の向こう側で、きらきらと夕日が輝く。
染まる、先輩の笑顔。
綺麗な綺麗な、オレンジ色。
なぜだかわからないけれど、涙がこぼれそうになった。
「ちぃちゃん」
「……なんですか」
うつむく私の頭に、ぽんっと先輩の手が置かれる。
その仕草は、先輩に甘えたあの日を思い出させるかのようで。
「大丈夫だからね」
「っ」
なにが大丈夫なんだ、って思った。
……でも。
やっぱりそれは、
まるで魔法の言葉のようだった。