明日、あなたが目覚めたら



「来てくれて、ありがとう」


「いえ……その、土曜日はあんなふうに帰っちゃったりしてすみませんでした」


「ううん、いいのよ。 全然いいの」



切なげに微笑んで。

それから、真面目な声で言った。



「千沙ちゃん、さっそくだけど話したいことがあるの。

……智の、ことで」


「……はい」



ぎゅっと目をつむって。


……大丈夫、大丈夫。

私を少しだけ安心させてくれる、ばかみたいなおまじないを唱えた。


そして、ゆっくりと、哀しく揺れるその瞳に向き合った。



「智は、ね。
きっと、千沙ちゃんももう気づいていると思うけれど……。


ーー記憶を失ってしまった、みたい」


「……っ」



なんとなく、わかっていた。

多分、そうかもしれないって。


だけど、信じたくなくて。

もしかしたら違うかもしれない、なんて淡い期待を抱いていた。


……いや、それは祈りに近かったのかもしれない。


そうであってほしい、という。


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