明日、あなたが目覚めたら



「……あとね、もうひとつあるの。
智の記憶から、失くなってしまったものが」


「何、ですか……?」



伏せられた瞳に、私は恐る恐る聞き返した。



「……バスケ」


「え……?」


「あの子、自分がバスケをしていたことも覚えていないみたいなの」


「……うそ」



あんなにも大好きだったバスケを?

ずっとずっと続けてきた大切なものを?


……そんなの、信じられない。



「思い出そうとしたら思い出せないんですか……?
ほら、なにかをキッカケに……」


「できるかもしれないわね、千沙ちゃんのことも一緒よ。
思い出させようとしたら、智は、千沙ちゃんのこともバスケのこともまた思い出すかもしれない」


「えっ……⁉」



私のことも……!?

な、なんだ。
てっきり、もう思い出してもらえないのかと思って……。


でも、考えてみればそうだよね……!

忘れられたというショックが大きすぎて、そんなことは全然思いつかなかった。


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