明日、あなたが目覚めたら
「そ、それじゃあ私……!」
また、努力します。
智に思い出してもらえるように。
バスケも、私自身も。
……そう言おうとした。
だけどそれは、ハッキリとした声によって遮られた。
「できないわ」
智のお母さんだった。
「……え」
「智の記憶を取り戻させることは、許可できない」
「ど、どうしてですか……?」
「千沙ちゃん、智がバスケを大好きだったのは知っているよね?」
「そりゃあ、もちろん……」
中学のころは、バスケや部活の話をたくさん聞かせてくれていたし、活き活きとバスケをしているところだって何度も私に見せてくれた。
バスケが大好きだって。
バスケが大切だって。
智の全部がそう言っていた。
それはきっと、高校生になった今でも変わっていない。
……いや、きっとずっと変わるはずがないんだと思っていた。
「だからよ……」
小さく呟いてから、智のお母さんが今にも泣き出しそうな表情で私を見据えた。