明日、あなたが目覚めたら
「智がバスケを大好きだったからこそ、私はあの子にバスケを思い出させたくない」
その瞳には、強い意志がこもっていた。
「……覚えていない?
智はもう思い通りにバスケをできないの。今まで通りなんて、どう足掻いてももう無理なの」
「で、でも……!」
「そんなのあの子はきっと、耐えられない。
……わかるでしょう? 千沙ちゃんなら」
「……っ」
どれだけリハビリを頑張っても、もう今まで通りにはバスケなんてできない。
それはバスケが大好きだった智だからこそ、きっとすごくもどかしくて辛くて苦しいこと。
……悔しそうに唇を噛みしめる智の姿が、容易に想像できた。
「……それにね、先生の話によると外傷は記憶喪失のただのキッカケにすぎなくて、根は心因性なんですって」
「しんいん、せい……?」
「ええ……記憶喪失には、外傷性と心因性っていうのがあるらしくてね。
外傷性は、脳のダメージによるもの。
心因性は、体が精神的な負荷なんかを避けようとして起こるもののこと」