明日、あなたが目覚めたら
精神的な負荷を、避ける。
つまり、それって……。
私が考えるよりも先に、智のお母さんが申し訳なさそうに口を開いた。
「忘れられた記憶……つまり、千沙ちゃんとバスケは、智にとってなんらかのストレスになっていたみたいなの」
「……っ」
私は。 バスケは。
智の記憶から “消えてしまった” わけじゃなくて、 “消されてしまった” っていうこと……?
「ごめんね、千沙ちゃん。ごめんね……。 そんなはずないって、言ったのよ?
バスケも、千沙ちゃんも。 智の精神的な負荷になんてなるはずないって。
だけどその可能性が高いって言われて」
きっと智のお母さんだってこんなことは、信じたくなかっただろう。
自分の息子が大切にしているはずだと思っていたものが、本当は、記憶から消してしまうくらいのストレスだったなんて。
「ねえ、失礼なこと聞いてるのはわかっているけど聞かせてほしいの。
……智と最近なにかあった?」
「……いえ」
「そうよね。ごめんね。
じゃあ、バスケ部で智になにかあったか知らない……?」
「ごめんなさい、わかりません……」