明日、あなたが目覚めたら



精神的な負荷を、避ける。

つまり、それって……。


私が考えるよりも先に、智のお母さんが申し訳なさそうに口を開いた。



「忘れられた記憶……つまり、千沙ちゃんとバスケは、智にとってなんらかのストレスになっていたみたいなの」


「……っ」



私は。 バスケは。

智の記憶から “消えてしまった” わけじゃなくて、 “消されてしまった” っていうこと……?



「ごめんね、千沙ちゃん。ごめんね……。 そんなはずないって、言ったのよ?
バスケも、千沙ちゃんも。 智の精神的な負荷になんてなるはずないって。
だけどその可能性が高いって言われて」



きっと智のお母さんだってこんなことは、信じたくなかっただろう。


自分の息子が大切にしているはずだと思っていたものが、本当は、記憶から消してしまうくらいのストレスだったなんて。



「ねえ、失礼なこと聞いてるのはわかっているけど聞かせてほしいの。
……智と最近なにかあった?」


「……いえ」


「そうよね。ごめんね。
じゃあ、バスケ部で智になにかあったか知らない……?」


「ごめんなさい、わかりません……」


< 133 / 166 >

この作品をシェア

pagetop