明日、あなたが目覚めたら


ぼそっと小さな声で言うと、先輩はまた声を上げて笑う。


なーにがそんなに面白いんだ。



「そうだな、帰れって言われたらおとなしく帰ろうかな。
ちぃちゃんに嫌われたくないしね」


「……そうしてください」



先輩にしてはやけに聞き分けがいいな。

なんて思っていると、ぽんと私の頭に大きな手がのって。



「でも、帰れなんて言わないでしょ?」



私を試すみたいにそう言った。


……なんか今日は、いつもにまして先輩のペースだ。 ずるい。



「さ、優しい優しい先輩になんでも言ってみー?
てきとうに聞いて、てきとうに相づちうってあげよう」


「てきとうなんですか……」


「てきとうだよ、俺らしいでしょ」


「……はは、そうですね」



なんであえて先輩を呼び出したんだろうって、ちょっとだけ考えてて。

そしたら、あの時たまたま泣いていたところを見られたからかなって結論にいたった。


もちろんそれもあるんだろうけど。

……だけど、やっぱり違うかもしれない。


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