明日、あなたが目覚めたら
「……智がね」
「うん」
先輩はてきとうなフリなんかしちゃってるけど、本当はすごく真剣にきいてくれてるでしょ?
「私のこと、バスケのこと、ずっと、ストレスに感じていたかもしれないんだって」
「へえ」
相づちだって。
私が言葉を求めているわけじゃないってわかっているから、そんな素っ気ないんでしょ?
「だからね、私のことも、バスケのことも、記憶から消しちゃったんだって」
「そっか」
慰めの言葉の代わりにくれる、その大きな手だって。
落ち込んでいる私を掻き乱して、いつものペースに戻してくれるそのふざけた態度だって。
「他のことは、全部全部、覚えてるのに」
「そう」
先輩の不器用な優しさだって、
私もう気づいてるよ。
「それでね。 智のお母さんに、失った記憶を取り戻させるようなことは、しないでって、言われちゃった」
「ふうん」
だからね、それが重なるの。
ううん、重ねてしまっているのかもしれない。
「つらい過去でしかないからって……っ」
先輩と、智を。
私を理解してくれる優しい二人を。