明日、あなたが目覚めたら



「千沙ちゃんは、あなたの中学生の頃からの “お友達” よ」



どうせリセットされてしまうのなら。


あなたのために。
私自身のために。

私は、あなたに嘘を吐こう。



傷つかせたくないと願いながらも、離れたくないとわがままを言う私をどうか許してください。



「……佐伯くん、この間は驚かせちゃってごめんね?」



まだ頭のなかが整理できなくて茫然としている智に、私はできるだけ柔らかく微笑んだ。


……大丈夫、大丈夫だ。

これが私の決めた道。
もう引き返したりなんてしない。



「改めまして……私は、藤江千沙。
佐伯くんとは、中学生の頃からずっと仲良くさせてもらっていたんだよ」



ーー隠せ、誤魔化せ、演じろ。


『私は、もう……』



「よかったら、また仲良くしてね」




『智と “恋人同士” に戻れるとは、思っていません』



ーーその嘘が、

“真実” になるその日まで。


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