明日、あなたが目覚めたら
「えと、俺が忘れてるのは藤江さんのことだけなの……?」
「うん、そうだよ」
あなたとの思い出をひとりで大事に抱えるには、やっぱり私には大きすぎるから。
だから、私もこの “嘘” が “真実” になるときにはもう、この思い出たちのことを忘れるよ。
新しい思い出で、すべて覆い隠そう。
「俺はなんで藤江さんのこと……忘れちゃったの?」
「それは私にもわからないの、ごめんね」
そしてあの頃の私たちは消えるの。
上書きされるの。
もうだれも、思い出さなくていい。
「藤江さんと俺は……」
「うん、なに?」
もう、だれも。
「本当に、友達だったの?」
……え。
まさかそんなことを聞かれると思っていなかった私は、智を見つめたままぴしりと固まった。
なに? どういうこと?
まさかもう、疑われて、る……?
「あ、いや、ごめん。 ……すごく失礼なこと聞いたよね?」
「や、ううん……でも、なんで?」
なるべく平静を装ってたずねると、目の前の彼は言いにくそうに口を開いた。