明日、あなたが目覚めたら
「バスケ、やめたの?」
「中学あがるとき、に……」
騒ぐ心臓を胸の上から抑えて、平静を装う。
「もったいないね」
「別に……そんなこと、ない」
目を逸らしてるから、佐伯くんの声だけが聞こえて、妙に近くにいるように感じる。
「俺、藤江さんとバスケしてみたいな」
「……え?」
逸らしていた視線を、佐伯くんに戻す。
パチリと目が合うと、佐伯くんはにこっとまたにこりと笑った。
「俺ね、バスケ部なんだ」
「そう、なの?」
「うん」
どうりで肌が白いわけだ。
屋内だもんね、バスケは。
「上手いんだ?」
私が聞くと、佐伯くんはすぐに「全然」と答えた。
「先輩たちのほうが、ずっと上手いよ。
でも、頑張ってる」
全然、だなんて絶対うそだ。
先輩たちが上手いかどうかは知らないけど、スポーツテスト1位の佐伯くんが下手なわけがない。
「……頑張ってるとこ、見てみたい」
……って、私なに言って⁉
勝手に口が動いていた。
ハッと気づいたときには、もう遅い。