明日、あなたが目覚めたら
頭上から降ってきた透き通るような綺麗な声。
たとえ誰であってもこんな姿は見られたくないと思っていた。
なのに、なのに……。
私はその声に。
「……佐伯、くん……?」
なぜか少し、ほっとしたんだ。
涙を小さく拭って、少しだけ顔をあげると、心配そうに眉を下げてこちらを見つめる彼。
そこにいたのは……やっぱり、佐伯くんだった。
「何か……あった?」
遠慮がちにそう聞いた彼に、ぶわっとまた涙がこぼれそうになった。
一週間前に、初めてちゃんと話した彼。
この一週間で、彼についてよくわかったことがある。
それは、すごく優しくて、常にみんなの中心にいる人気者ということ。
少し話したことがあるくらいの私にも、会えばにこりと笑って挨拶をしてくれる。
だけどそれは、他の子にも同じで。
私もその一人。
ただの顔見知り程度。
それなのに……
どうして、そんなに優しいの。
「あの、ね……っ」
そこまでは出たのに。
ぐっとその先の言葉がノドにひっかかって、それ以上話すことを許してくれない。