明日、あなたが目覚めたら


どうして……?

優しい彼ならきっと、私の話を真剣に聞いてくれる。


言いたいよ。

この胸にかかった黒いモヤを少しでも吐き出したい。

楽になりたい。



「……藤江さん?」



優しい瞳が私を覗き込んで、心配そうに見つめる。


ほわっと胸があたたかくなった気がした。

でもそれと同時に、胸がズキッと鈍い音をたてた。



「……っ」


ああ、そっか。
言えないんじゃ、ない。



「ごめん、ね……何もない」



ぐっと無理に口角を上げて、精いっぱい笑顔をつくった。


さっきまで泣いてたから「何もない」は、ちょっと無理があったかもしれないけれど。

それでも、優しい彼は無理に聞いてきたりしないだろうから。



「そっか」


「う、ん……ごめんね」



やっぱり彼は、それ以上聞いてくることなんてなくて。



……どうしてだろう。

私は、言えなかったんじゃなくて……言いたくなかったんだ。


なぜだか、佐伯くんに知られたくなかった。

こんな……惨めな、私を。


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