明日、あなたが目覚めたら
きっと、涙でぐちゃぐちゃだろうけど。
それでも、抱えきれないくらいの “ありがとう” をちゃんと伝えたかったから。
だから、笑った。
佐伯くんの瞳をしっかりと、見つめて。
すると、佐伯くんは驚いたように目をまん丸にした。
それから、顔を隠すように伏せて、くしゃくしゃっと綺麗な黒髪を掻いた。
「……佐伯くん?」
「あ〜、ずるい……」
「え、え?」
ず、ずるい? なにが?
話がわからなくて首を傾げる私。
佐伯くんはバッ顔を上げて、「んーん、なんでもない!」と言った。
そ、そうなの?
でも、なんでもないようには見えないんだけど……。
「ふふ」
だって、頬が少しだけ赤いんだもん。
なぜかはわからないけれど、でも、いつもとは少し違う佐伯くんが見れてちょっと嬉しくなった。
「〜っ、行こっ、保健室!」
そう言って、また私の手をひいて歩き出す佐伯くん。
自然とまた繋がれた手を見て、笑顔がこぼれる。