明日、あなたが目覚めたら


逃げるように、ずんずんと保健室に向かって行く私の手首を、佐伯くんがぱしっと掴んだものだから。


「……っ」


次は、私が固まる番。



「あのさ」


「は、ハイ……」


「……やっぱり、ちょっとだけサボらない?」


「えっ」



ぐるん、と勢いよく振り返る。


するとそこには、 “しぃーっ” と人差し指を口もとにあてて、いたずらっ子のように笑う佐伯くんがいて。



……あ。 またひとつ、私の知らない佐伯くんを知ることができた。


その表情に、仕草に。
私の胸はきゅんっと締め付けられる。



「……後でもっと、面倒なことになるよ?」


「うん、今はそれでも藤江さんといたいから。 だめ?」


「〜っ! ……だ、だめじゃ、ない」



だめなんて、言えるわけない。

すごくすごく嬉しい。


……だけどもう、心臓がもたないかもしれない。

だって、さっきからずっとバクバク暴れて、言うことを聞いてくれないの。


ほんの数十分前までは、あんなにも泣きそうな気分だっただなんてウソみたいだ。


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