明日、あなたが目覚めたら
「怒られるかなあ」
「怒られるだろうなあ」
さっきまでは普通に歩いていた廊下も、サボることにした途端ゆっくりゆっくり静かに歩く。
後ろめたいことをしているはずなのに、二人だけの隠し事みたいで、なんだかこそばゆい気持ち。
「ねえ、藤江さん」
「んー?」
「名前で呼んでも、いい?」
「っ、うん……!
……わ、私も呼んでいい?」
「うん、呼んで」
「……と、智」
「千沙」
それから、ふたりで少しだけ見つめ合って「バカだ〜」とクスクス笑う。
……なんだろうこれ。
胸のあたりがむずむずするし、恥ずかしい。
だけど、なんだかとっても幸せだ。
「ねえ、千沙」
「……なに?」
まだ聞き慣れないそれに、私はぎこちなくこたえる。
すると、ひらりと智は振り返って。
「すきです。 俺と付き合ってください」
「え」
「……だめ?」
こてんと不安気に首を傾げた智に。
ああ、また新しいきみが見れた、なんて思いながら。
私の返事なんて、そんなのもう決まってる。
「だめじゃ、ない」