明日、あなたが目覚めたら



優しい、爽やか、大人っぽい。

たくさんの人がいろんな言葉で智を褒めるけれど、私からしてみると「へえ〜、ちょっと違うのになあ」なんて思うこともしばしば。


そういうときは、みんなが知らない智を独り占めしているみたいで嬉しくなるんだ。



それから。



「千沙」


「なに」


「ほんとは、さみしい?」



にこりと微笑む智は、やっぱり。



「……さみしい」



私を素直にさせるのが上手なようだった。



「よくできました」


「……ん」



ご褒美とでも言うように、いつもこうやって頭をぽんぽんと撫でてくれる。


それがわかっているから。
それが欲しいから。

だから私は、智の手にかかれば、こんなふうに素直になってしまうのかもしれない。



「やっぱりクーデレだ」


「……意味わかんないこと言わないで」



思い通りになってる気がして、なんだかちょっと悔しいけれど、私が素直になったら智はすごく嬉しそうな顔をするから。


だから私も、素直になれることは嬉しい。

……なんていうのは、智には絶対秘密。


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