明日、あなたが目覚めたら
.



そして、ついに迎えた卒業式。

予行練習通りに式は進んでいき、長かったような短かったような、そんな3年間に私たちは幕を閉じる。



……智とは、今日はまだ会っていない。


思い返せば、中学校生活のほとんどの思い出は智と一緒だった気がする。



ぽつり、ぽつりとどこからか聞こえはじめた嗚咽は、だんだんと伝染していって。

その波は、体育館を侵食していく。



「……っく、う…」



それに紛れるようにして、こっそりと私も涙を流した。

伝染したふりをした。


私はただ、智とこんなふうに中学校生活を終えてしまうのかと思って、それがとてつもなく悲しかった。




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あふれかえる人たちなか、見つけたその背中。


手を伸ばそうとして、ためらって。

結局触れることなく、その名を呼んだ。



「……智!」



振り返った彼に、私はそっとぎこちない笑顔を向けた。



「卒業、おめでとう」



震える声には、どうか気づかないで。


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