明日、あなたが目覚めたら
「……ああ、うん。 おめでとう」
笑顔なんか期待していたわけじゃない。
智が今、そんなものを返せるような心境じゃないのは、よくわかっている。
だけど、目さえ合わせられなかったことに、少しだけ心が痛んだ。
「……は、早いね、卒業なんて」
「ああ」
「思い出、いっぱいできたよね」
「……そうだな」
「あのね、智、私ね……」
「千沙」
呼ばれた名前に心臓が跳ねる。
「な、に……」
呼ばれて目を合わせれば、言葉を失うほど冷たい瞳がそこにはあって息を呑む。
「今ひとりになりたいから、ほっといて。
正直、今、千沙と話したくない」
「……え」
「っ、あ」
鋭く低く吐き捨てられた言葉に、私の思考は真っ白になる。
……智の口からこんな声を聞いたのは初めてのことだった。
目の前には、しまった、というような表情の智。
その表情から悟る。
……なんだ。
智、今までずっと、我慢してたんだね。
溜まって溜まって……
そして今、やっと吐き出せたんでしょう?