明日、あなたが目覚めたら



聞き慣れた自分の名前に、振り返ったのはほとんど反射的だった。



「あ、やっぱり千沙ちゃんだ」


「お、おばさん……?」



驚いたようにしてから、ふふ、と上品に笑うその女の人は、もうずっと会っていなかった智のお母さんだった。



「久しぶりだねえ、元気にしてた?」


「あ、はいっ。お久しぶりです……!」


「ふふ、大人っぽくなっててすぐにはわからなかった」



智のお母さんと会うのは、中学生以来。


以前はよく智のお家にもお邪魔していたし、逆に智が私の家に来ることもよくあった。

だから、私は、智のお母さんによくしてもらっていたんだ。


まあ、それもパタリとなくなってしまったんだけど……。



「智に会いに来てくれたの?」


「はい、すみません突然」



会うことになるだろうとはわかっていたけれど、こんなところで会っちゃうとは……。



「ううん、こちらこそごめんね?」


「えっ?」


「すごく心配かけちゃっただろうし、千沙ちゃんもそのせいで怪我をしちゃったんでしょう……?」


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