明日、あなたが目覚めたら
ごめんね、と眉を下げて言う智のお母さんに、私は慌てて「大丈夫ですよ」と首を振る。
私が勝手に倒れたんだもん。
智は全く悪くない。
それに、どこからどう見てもあの事故の原因は、向こうのトラックによる一方的なものだった。
そう思うとふつふつとトラックの運転手に対する怒りがわいてきた。
……だけど、今、私が怒ったってどうしようもないよね。
「智の様子は、どうですか……?」
「まだ目は覚ましていないけど、もう大丈夫よ。 ゆっくり眠っているわ」
「そう、ですか……よかった」
ほっと安堵の息を漏らすと、智のお母さんが「あの子ったら、大事な彼女を心配させるなんて」とおどけたふうに言った。
きっと智と私が、今どんなふうになっているか知らないんだろうな……。
そう思いながら、私は苦笑いを返すことしかできなかった。
「あの、中に入らせてもらっても……いいですか?」
「あ、そうね。 立ち話も何だしね」
「すみません……」
「ううん、いいのよ。 智も喜んで目を覚ますかもしれないわね」