ライラックをあなたに…
「別に食べられない訳じゃないんだけどね~、なんか苦手なんだよね~」
「でも、お野菜を摂らないでいたら、身体に悪いですよね?」
私は怒りを堪えながら、体裁のいい言葉を並べてみた。
すると、
「ん~でもさぁ、ビタミンとかならサプリメントを飲めば済む事だし」
「ッ?!」
ダメだわ。
完全に堪忍袋の緒が切れてしまった。
サプリメントを飲めばいいですって?
じゃあ何?
野菜を大事に育てた農家さんの苦労はどうでもいい訳?
料理の代金さえ支払えば済むっていう問題じゃないでしょ!!
こんな人と結婚したら大変な事になりそうだ。
父親が野菜を綺麗に弾いている姿を見て、子供が真似したらどうするの?
………ありえない!!
ダメだ。
この人との将来は想像もしたくない。
私は自分の目の前に残されている料理や野菜達に心の中で謝罪し、席を立った。
「ごめんなさい……あなたとは付き合えません」
「えっ?」
「私、オーガニック料理が売りのカフェを開くのが夢なんです。……このお店みたいな」
私は嫌味も兼ねて、テーブル脇にあるメニューを目の前に突き付けた。
そして、上品に微笑み軽く会釈して、その場を後にした。