ライラックをあなたに…


「別に食べられない訳じゃないんだけどね~、なんか苦手なんだよね~」

「でも、お野菜を摂らないでいたら、身体に悪いですよね?」


私は怒りを堪えながら、体裁のいい言葉を並べてみた。

すると、


「ん~でもさぁ、ビタミンとかならサプリメントを飲めば済む事だし」

「ッ?!」


ダメだわ。

完全に堪忍袋の緒が切れてしまった。


サプリメントを飲めばいいですって?

じゃあ何?

野菜を大事に育てた農家さんの苦労はどうでもいい訳?

料理の代金さえ支払えば済むっていう問題じゃないでしょ!!


こんな人と結婚したら大変な事になりそうだ。


父親が野菜を綺麗に弾いている姿を見て、子供が真似したらどうするの?

………ありえない!!


ダメだ。

この人との将来は想像もしたくない。



私は自分の目の前に残されている料理や野菜達に心の中で謝罪し、席を立った。



「ごめんなさい……あなたとは付き合えません」

「えっ?」

「私、オーガニック料理が売りのカフェを開くのが夢なんです。……このお店みたいな」


私は嫌味も兼ねて、テーブル脇にあるメニューを目の前に突き付けた。

そして、上品に微笑み軽く会釈して、その場を後にした。


< 286 / 332 >

この作品をシェア

pagetop