ライラックをあなたに…
小池教授の研究室は3階の突き当りに位置していて、かなりの広さに驚いた。
私が通っていた大学の研究室なんて、この半分くらいの大きさだった気がする。
研究室の至る所に植物が置かれ、一颯くんの部屋同様、暗号のような札が付いている。
それに、どこからともなくハーブの香りが漂っている。
研究室って、こんなにも居心地がいい所だったっけ?
窓際の鉢植えを眺め、その横にある書棚に視線を移した所で私の視線はとある物に釘付けになった。
『環境大臣特別賞』と書かれた1つの盾。
そこには『本間一颯』と書かれていた。
「それは、去年のコンテストで彼が頂いたものですよ」
教授は私の隣りに立ち、同じ盾を見つめている。
「一颯くんって、本当に凄い人なんですね」
「えぇ、とっても。私はこの世界に長いこといますが、彼ほどの才能の持ち主は中々いませんよ」
そう口にした教授はとても穏やかな表情を浮かべた。
再び、盾に見入っていると。
「魔法のハーブティーは如何ですか?」
「へ?」
目の前に爽やかな香りを纏ったカップを差し出す教授。
自然と視線が湯気のもとへと下りてゆくと……。
「あっ……」