ライラックをあなたに…
教授は徐に奥様との馴初めを話して下さった。
研究に打ち込んでいた彼は、自宅から程近い園芸店や花屋を巡っていた時に、奥様のご実家でもある花屋に寄ったらしい。
けれど、どこにでもあるよな花屋では無く、店頭にはサボテンや苔玉など、ちょっと変わった鉢植えがビッシリと並んでいたそうだ。
花屋なのに花が殆どなくて、見るからに味気ない感じの店構えだったとか。
そして、店番をしていた今の奥様が花のような笑顔でしきりに苔玉の説明を始め、あまりの力説に『喉が渇いたから一緒にお茶でもどうですか?』と、何故か店の奥に通されたそうだ。
何だかんだとその後、1時間程力説を聞いて、一鉢の苔玉を買って帰ったのだとか。
研究者の興味心を擽る彼女の言葉に、教授はすっかり魅了されていたと言う。
そして、暇をみつけては足繁く通い、いつからか、このハーブティーが出されるようになったらしい。
植物や樹木を扱う専門の学者としては、そのハーブティーが気になって仕方なかったそうだ。
すぐさま花の名前を調べたり、ハーブティー自体もあれこれ調べたのだとか。
そして、そのハーブティーには―――――。