ライラックをあなたに…
「もしかして、デロンデロンに酔った私をてごめにしたの?」
「えっ?あ、いや…」
彼は両手を振りながら慌てて口を開いた。
「俺、襲ってないよ?!」
「………ホント?」
「うんうんうん、神に誓って」
彼は右手を上げて、宣誓するみたいなポーズを取った。
そんな彼の手を見て、ふと自分の左手首に視線が。
だったら、どうして手首を怪我したの?
無意識に左手首の包帯部分に指先が辿る。
「痛む?」
「……少し」
心配そうに覗き込む彼。
恐らく、暴れた私を介抱してくれたのだろう。
酔い潰れた女を押し倒さず、見ず知らずの女の世話をするなんて、相当のお人好しだわ。
けれど、何故私はそんなにも大暴れをしたのかしら?
こんな事は本当に初めてで、自分でも驚きを隠せない。
「あの…」
「ん?」
「私とはどこで?」
本当に彼に対しての記憶がない。
そもそも、こんな人の良さそうな彼と、どこで知り合ったのだろうか?