ライラックをあなたに…
「本当に俺のこと、覚えてないの?」
「………」
何度も何度も思い返しても記憶がない。
一体、彼は誰なのか?
私とはどこで知り合ったのか?
何故、私は怪我をするほど暴れたのか?
どうして、彼の家にいるのか?
考えただけで混乱する。
すると、彼は深いため息を吐いた。
先程まで柔和な表情だった彼は、一瞬にして表情を曇らせ、ゆっくりと口を開いた。
「俺が誰なのか、知りたい?」
「………はい」
私は率直な質問に素直に答えた。
「俺が誰か、何故、あなたと知り合ったのか。どうしてここにいるのかを知ってしまったら、きっとあなたは正気でいられなくなる」
「…へ?」
「それでも……いいの?」
彼があまりにも真剣な表情をするので、思わず生唾を飲み込んだ。
彼が心配するような事が……。
一体、私の身に何があったのだろうか?
知ってはいけない雰囲気が漂うが、それが返ってますます私を知りたい衝動へと走らせる。