ライラックをあなたに…
「……教えて下さい」
顔を歪ませた彼をじっと見据えた。
「本当にいいんだね?」
「……はい」
私の真剣な表情に根負けしたようで、彼は再び深いため息を吐いた。
そして、彼はゆっくりと1つ1つ丁寧に言葉を紡ぎ始めた。
「俺の名前は本間一颯、24歳、大学院生。あなたとは昨夜、俺がバイトしている居酒屋で知り合った」
「………」
「知り合ったと言っても、バイト中は殆ど会話らしい会話は無かったかけど、あなたはカウンターで泣きながら飲んでいた」
自分の昨夜の様子を聞かされ、何だか胸の奥が少し、重くなるのを感じた。
何だろう……この感覚。
私は無意識に胸に手を当て、彼の言葉に耳を傾ける。
「閉店まで飲んでいたあなたを放っておけなくて、こっそり後をつけたんだ」
「……ストーカー?」
「まっ、まさか!?ただ、泣いていた姿があまりにも悲しそうで辛そうだったから…」
「………」
あっ、まただ。
胸の奥がズンッと重くなった。
少し息苦しさを覚えながら、彼の言葉に耳を傾け続けた。