鈴の栞
「ネコちゃんさあ、友達少ないだろ」
「え?」
突然何を言い出すかと思えば、友達が少ない? ……そりゃあ、自慢できるほど多くはないけど……ていうか、どうしてそんなことを言われなければならないのか。しかもこんな男に!
「そういう子、モテないよー。いいじゃん減るもんじゃないし。これも何かの縁だろ?」
「モテないとか余計なお世話……じゃなくて!もう、ちょっと黙ってください。喋りすぎ。ここ図書室ですよ」
「ネコちゃんも結構喋ってるけどね」
「ああ言えばこう言う!先輩こそモテませんよ、そういう男」
「俺はモテてるもん。男にも女にも」
男にモテるって、ソッチの意味じゃないからね、と笑う整ったその顔を、ぶん殴りたい衝動にかられた。
何なのこの人。腹が立つ。
先輩に取られていた問題集を引ったくるように取り返し、私は無言でシャーペンを動かし始めた。
こうなったら無視だ無視。何を言われてもシカトしてやる。そう決めて問題を解くことに集中する。
しかしその後、手嶋先輩が私に話しかけてくることはなく。ふと斜め前に目をやれば、彼はいつの間にか突っ伏して寝てしまっていた。